福岡地方裁判所久留米支部 昭和46年(ワ)70号 判決
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〔判決理由〕原告ら主張の日時場所で訴外亡岡石明が訴外野田政勝の運転する車両との衝突事故により死亡したこと、右加害車両が被告会社の所有する小型貨物車で、右会社のため運行の用に供されていた際前記事故を起したものであることについては当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、右岡石明の傷害は左右肋骨の大部分及び胸骨を骨折する胸部圧挫、左、右前頭骨、側頭骨、左上腕骨の開放粉砕骨折、左頬骨々折、左下腿挫創等主として胸、顔、頭を強圧する傷害で即死した事実が認められるところ、<証拠>を綜合すれば、前記加害車は事故現場に向け幾分上り勾配の歩車道の区別のない平たんな舗装道路を時速五〇粁で前照灯を下に向けて進行中、対向車の強い前照灯に眩惑され一瞬眼前が真暗くなつたが、右直前進路前方には何ら人車の障碍を認めていなかつたので、一時停止は勿論減速して徐行することもせず漫然と従前どおりの速度で進行し、進路上の障碍物を早期に発見して事故の発生を未然に防ぐべき注意義務を怠つたため、前方進路上に酒に酔つた前記岡石明が、道路の中央線付近に頭を左側端に足を向け仰向け大の字なりに寝ているのを、その間隔七、八メートルの至近距離に近づいてから発見し、直ちにハンドルを右に切つて中央線を超えて対向車線に入りブレーキをも踏んで同人との衝突を避けようとしたが、既に眼前まで来ていた次の対向車の右前部に斜めに接触したので再びハンドルを左に切つて進行したため、前記路上に寝ていた岡石明の身体上を左前車輪で轢過し一二メートル前方で停止した事実、最初の対向車の前照灯に眩惑された地点から被害者岡石明の寝ていた地点まで三八、三メートルの距離があり、眩惑されて眼前が暗くなつた時点においてブレーキをかければ被害者の横臥地点まで進行せずに制動でき衝突乃至轢過を十分避け得た事実を認めることができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。以上の事実によれば加害車の運転者訴外野田政勝に本件事故の原因となつた運転上の過失があつたことは明白であり、同訴外人の行為が緊急避難である旨の被告の主張は、主張自体不明確であるうえその立証もなく採用できない。しかしながら一方被害者岡石明にも極めて重大な過失があつたことは否定できないところであり、本件事故における右両者の過失の割合は、諸般の事情を勘案し、加害車及び被害者双方いずれも五分と認めるのが相当であり、賠償額の決定につき斟酌されねばならないが、右訴外人の過失に基く不法行為により生じた損害につき、被告会社が加害車の所有者、運行供用者として責任を負うべきことは多言を要しないところである。
(安仁屋賢精)